[経営者・管理者に聞いた]介護事業所の”いま”

~他事業所の事例を参考にしよう・お互いに頑張ろう~Presented by 介護マスト

利用者さまのやりたいに寄り添う!「自然と行きたくなる場所へ」

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デイサービスグランドジェネレーションパートナー

・東京都足立区

・定員 10名

 

お話を伺った人

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鈴木 智明さん(所長)

 

利用者さんの意欲支援を理念におく「デイサービス グランドジェネレーションパートナー」。所長を務める鈴木智明さんは介護歴14年のベテラン介護士です。それまで勤めていたデイサービスを辞め、3年前に立ち上げに参画。意欲支援を重視したサービスとはどんなものなのでしょうか? それによってどのような効果が生まれるかなどについてお伺いしました。

 

高齢者の意欲を一番に尊重する

カフェをイメージしてつくったというシックな室内。入ってまず目についたのは、事業所の理念である「意欲支援」の文字でした。

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▲法人の名前にも使われている「意欲支援」は同事業所の理念でもある

 

「高齢になると、自分のやりたいことがあっても、年齢や環境のせいにして『私はいいのよ』と諦めてしまう人って多いんですよね。デイで過ごせる時間は決まっていますし、ある程度縛りがありますけど、その中で利用者さんの意欲を最大限尊重して、さらに生み出せる環境を作っていきたいと思っています」

室内を見渡すと置いてあるのはカラオケ、麻雀、将棋、トランプ……。利用者さんの「やりたい」「してみたい」という気持ちを尊重するために、さまざまなレクリエーションを用意しているそうです。

「カラオケは特に人気ですね。皆さん昭和の曲を楽しそうに歌っています。うちは1日のプログラムを設けておらず、『月曜日の13時から1時間はカラオケ』みたいな縛りがないので、ずっとカラオケしたり、将棋をしたり、近くの公園まで一緒に歩いたり。利用者さんがそれぞれ自分のやりたいことをとことんやって、満足感を味わえるように活動しています」

やりたいことが自由にできる環境のせいか、様々な趣味や特技を持った利用者さんが多いと話します。

「最近入った女性の利用者さんは折り紙がお好きなんですが、両目が不自由でいらっしゃるにも関わらず、難しい作品をいとも簡単に作ってしまうすごい方なんですよ。まさに盲目の折り紙師ですね」

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▲折り紙を作る動きを手が覚えているんだとか

 

ランドセルに、かえるに、トマト……。鶴すら折れない自分とは比較にならないほど上手ですね! 作品は鈴木さんや事業所の人にプレゼントされているそうです。人にあげて喜んでもらうことが、その方にとっての喜びにもなっているんですね。

 

会話から生まれる”人間らしさ”

「意欲支援」と並んで事業所が大切にしているのは利用者さん同士や利用者さんとスタッフの間の「コミュニケーション」だそうです。『コミュニケーションの時間を大切にするために、お風呂をあえて作らなかった』と語る鈴木さん。デイサービスにはお風呂がつきものというイメージですが、どのような意図が隠されているのでしょうか?

「お風呂はもちろん必要なんですが、そこにスタッフの配置がすごくとられて、お風呂を希望する人への対応に追われてしまい事業所全体がばたばたしてしまうんですよね。それなら最初からなくしてしまえば、もっとコミュニケーションできる時間が増えるんじゃないかなって。実際、利用者さんはすごくゆったり過ごしていますよ」

お風呂をなくす代わりにたっぷりコミュニケーションに時間を使えるということですね! 最初はケアマネジャーさんにも驚かれたそうですが、今では利用者さんも入浴設備がないとわかった上で紹介していただけるようになったそうです。

また、誰もカラオケをしていないときは、ガイドボーカルが入った昭和の曲をBGMとして流しているそうですが、これもしっかりとコミュニケーションにつながっているんだとか。

「曲を流していると、『この人のこの曲が好きだったな』とか『この曲がはやった頃はこんなことをしていたな』という風に、昔を思い出すことでそれがきっかけで会話が生まれたりすることもよくあるんです。自然と回想法になっているんですよね」

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▲カラオケボックスのパーティールームにあるような本格的な設備

 

コミュニケーションのきっかけを生み出すために、さまざまなサービスが用意されているんですね。そこまでコミュニケーションを大切にしているのはなぜなのでしょうか?

「友達と楽しく話したり、たまには口げんかしたり、良いことも悪いことも全てがコミュニケーションです。人同士の関わりから喜怒哀楽のような感情がうまれ、『何かしたい』という意欲につながっていきます。家でぼーっとしていたり、一人でテレビを見ているだけでは、なかなか沸いてこないですね。そういう気持ちを私たちは尊重していきたいです。ただ、利用者さん同士が関わるとトラブルになることもあるので、そういうときはスタッフが間に入って仲裁したりしながら、利用者さんが気持ちよくデイに来てもらえるように配慮しています」

 

どんな時も利用者さん第一

小さい頃から人と接することが好きな鈴木さんは、新卒で飲食の会社に入ったものの、もっと深く人と関われる仕事をしたいと考え介護の世界に進みました。以来14年間、通所介護を中心にさまざまな介護事業所を経験してきました。現在一緒に働く経営者の若山さんから、「これから立ち上げる事業所の現場運営責任者をやってほしい」と3年前に打診されたとき、当時働いていた認知症デイサービスに残るか迷ったといいます。

「当時働いていたデイでも、新事業の立ち上げメンバーとして声をかけられていました。でも、若山から一緒にやりたいと熱心に言われて。『意欲支援』という理念や若山の介護への想いが、自分が今まで感じてきた想いと合致していたし、ゼロから作り上げていくのが楽しそうだなと感じて、ここの所長になると決めました」

所長として事業所を運営する中で、時には利用者さんからお叱りを受けたりと大変なこともたくさんあると笑いながら話す鈴木さん。それでも頑張れるモチベーションの源は何なのでしょうか?

「自分を慕ってくださった利用者さんやそのご家族からいただいた言葉に支えられ、励まされています。例えば、利用者さんで残念ながらご逝去された方がいたのですが、そのご家族から、『デイに行ってからの母はすごく変わった。本当にありがとう』と言われて。個人としても、事業所としても、利用者さんの人生の一部に関わったことで少しでも幸せを感じていただけたのかなと思って、こちらこそ『ありがとう』と心からお伝えしたくなりました。そういうことの積み重ねがモチベーションにつながっているのかもしれません」

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▲利用者さんもスタッフさんもみなさん仲良し!

 

「ありがとう」の連鎖って本当に素晴らしいですよね。最後に事業所の今後の方針についてお聞きしてみました。大切にしたいのは、利用者さんを中心にしながらも自分たちのコンセプトをしっかりと貫くことだそうです。

「介護保険制度って色々変わるじゃないですか。それに合わせて事業所は変化を求められると思うんですけど、どんな時だって自分たちが向き合うべきは、制度じゃなくて、利用者さんですよね。まだまだ元気な高齢者の方はいっぱいいるので、そういう方たちの様々な意欲を尊重していきたい。うちには高齢でもしっかりしている利用者さんが多いので、自然と『行きたい』『楽しい』と思ってもらえる事業所であり続けたいと思っています」

平均寿命が延び、高齢になっても体力のある方がどんどん増えています。年をとっても自分たちの意欲を燃やせる環境を作っていくことで、より多くの人が幸せな余生を過ごせるのではないでしょうか。グランドジェネレーションパートナーのような「意欲支援」に注目したデイサービスの輪がこれから広がっていくことが期待されますね!

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