[経営者・管理者に聞いた]介護事業所の”いま”

~他事業所の事例を参考にしよう・お互いに頑張ろう~Presented by 介護マスト

「当たり前に見える日常生活こそ大事」がんを克服した経営者は使命感に溢れていた

株式会社はまリハ

・神奈川県横浜市

・訪問看護リハビリステーション(24時間対応訪問看護、訪問リハビリ)

 

お話を伺った人

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臼居優さん(代表取締役、理学療法士)

 

神奈川県横浜市緑区、JR横浜線「十日市場」駅から歩いて数分の場所に居を構えるのが、今回お邪魔した訪問看護リハビリステーション「株式会社はまリハ」です。同社の代表取締役であり理学療法士でもある臼居優さんは現在38歳。日焼けした肌に柔和な表情、とてもハツラツとした印象を受けますが、実は数年前に白血病であることが発覚し過酷な闘病生活を経験されています。臼居さんがなぜ在宅生活を重要視するのかなど、同社の活動内容とあわせてお伺いしました。

 

突然のがん宣告、闘病後に感じた日常生活の尊さ

大学在学中、ボランティアで介護の世界に足を踏み入れた臼居さん。小さい頃からおじいちゃんおばあちゃんと一緒に生活してきたこともあり、お年寄りのお世話をすることが好きだったといいます。

「介護保険制度が始まった年に地域で介護ボランティアを募集してて、暇だったし興味本位で応募してみたんです。そしたら思いのほか楽しくて、ヘルパー2級を取りました」

そのまま介護の仕事に就くかと思いきや、縁あって介護とは関係のない会社に就職。ゆくゆくは介護関連の事業を始めると聞いていたもののなかなかその気配はなく、介護の仕事に対する想いが次第に強まっていったといいます。

「3年間その会社でお世話になったあとに、理学療法士の専門学校に入学しました。4年生になったときに突然、急性骨髄性白血病の宣告を受けまして……。すぐ入院することになって、もうてんやわんやでした」

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▲突然のがん宣告にご本人だけでなく「家族もパニック状態だった」と語る臼居さん

 

当時の辛い闘病生活のことを振り返りつつ、この経験があったからこそ日常生活の大切さに気付かされたといいます。

「半年の入院生活で、病院は長くいるべきところではないと心から感じました。病院というところはその人らしさを奪ってしまう場所なんです。家がホームだとしたら、病院はアウェイ。治療が終わって家に帰った時のあの安堵感というか安心した気持ちは、一生忘れないと思います」

幸い抗がん剤が効果を発揮し病気は完治。現在も再発することなく元気に生活できているそうです。

理学療法士の資格を取得した後は地元の総合病院に就職し訪問リハビリに従事。在宅の魅力を改めて感じ自ら独立することを決意しました。

「病院だと制度上の諸問題でスムーズにサービス提供まで結びつかないことがあって、それなら自分でやろうって強く思うようになりました」

こうして「はまリハ」が誕生したのですね。

 

日常生活に勝る訓練なし “何でも屋”の精神で衣食住をサポート

「はまリハ」の現在までの利用者数は120人を超え、リピートする人も多いといいます。

「一度ご利用いただくと“また次も”っておっしゃってくださる方が多いので、サービスにはある程度の自信があります! 食事、入浴、排泄の3本柱を中心に、生活そのものを支えるサービスを提供させていただいています。基本は本人のやりたいことをお手伝いすること。在宅生活でのお困りごとをお聞きし、「トイレに行くのが大変」ってことであればトイレまで一緒に行ってみて、『手すりがあれば行けるかな~』とか、ご本人の様子を見ながらリハビリの視点からサポートさせていただいています」

最近は「外にケーキを食べに行きたい」というご要望にお応えし、一緒にバスに乗って喫茶店でケーキを食べてきたこともあるそうです。

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▲全員が集まれる時間は少ないながらも、チーム一丸となって取り組んでいる

 

「何でも屋に近いところもあるんですけど、とにかく“日常生活に勝る訓練なし”と思っていて、日常生活を送ることそのものがリハビリなので、僕たちはそのサポートをさせていただいています。リハビリって聞くと1時間みっちり歩行練習するとか、そういうのをイメージする方が多いんですが、うちはご利用者やご家族との会話もとても大切にさせていただいています。おばあちゃんに大人気のイケメンPTもご用意してます!(笑)」

がんを患い、長い入院生活を味わった臼居さんだからこその在宅生活へのこだわりが、同社のサービスにも表れていました。

 

訪問リハを通して地域の下支えをしていきたい

今後は放課後デイと療養通所介護もやってみたいと臼居さんは話します。

「ターミナルの方とか介護度が高い方もうちで見ていきたいと思ってまして。地域の方をまるっと、手厚くケアしていける環境を作りたいんです」

『訪問リハビリといえばはまリハ』といわれるのが理想だと語る臼居さん。一人でも多くの人を住み慣れた環境で最後まで生活できるようにしたいという思いがあるそうです。その使命感はどこからくるのでしょうか。

「がん闘病で長く入院したこともありますし、病院に勤務してたってこともありますが、どうしても病院て患者さんを”お客様”扱いしちゃうんですよ。患者さんも『先生ありがとう』って雰囲気にどうしてもなりますし。でも、当然かもしれませんが家に帰れば緊張がほどけて表情がガラッと変わるんですよね。それを目の当たりにしたとき、やっぱり日常生活を送ることって当たり前のことだけど人間の根本なんだなって確信したというか。それに優秀なセラピストって病院にはいるんですけど在宅の場面になると少ないのが現状で、そういう人たちが安心して働ける環境を整えたいという思いもあります」

ご利用者さんに「病人」という意識を持たせたくないからと、制服を白衣ではなくポロシャツにしたり、事業所の車に看板をつけないなど、男性ながらも細やかな心配りをされている臼居さん。そんな臼居さんが経営する事業所だからこそ、リピートする方が多いというのも頷けますね。今月新たに看護師が増え、看護師5名、PT7名、OT4名、ST1名、事務1名の大所帯をまとめる経営者として、臼居さんのさらなる活躍が期待されます!

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▲新職員の歓迎会の様子。フェイスブックでは利用者さんとのふれあいや様々な活動内容についても紹介されている

 

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