[経営者・管理者に聞いた]介護事業所の”いま”

~他事業所の事例を参考にしよう・お互いに頑張ろう~Presented by 介護マスト

思い描くものを形に!ゼロから生まれた朝型デイ

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モーニングデイあさがお

  • 東京都北区赤羽
  • 定員10名

     

お話を伺った人

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戸田昂志(たかし)さん(管理者)

 

“自分の理想のデイサービスをゼロから作っていきたい―”。そんな強い想いを持って新たなデイの立ち上げに参加した戸田昂志さん。戸田さんが管理者を務める「モーニングデイあさがお」は、早朝の時間帯に注目し、朝7時半には利用者さまをお迎えします。なぜ朝型に特化したデイを始めたのか? 事業所の特長やその意図についてお伺いしました。

 

手作りの朝食!朝型で変わる生活リズム

「一番の特長はサービス提供時間です。朝7時半にお迎えで、お帰りは13時過ぎになります」

管理者の戸田さんは慣れない取材に少し照れた様子で話してくださいました。

「お帰りの時間が早いので、利用者さまは午後の時間を有意義に使えます。自分の動ける範囲で家事をされる方が多いようです。あと生活リズムも整いやすいと思います。朝食を抜いてしまったり、生活リズムが不規則であまり眠れないという方も、うちにきていただければ朝食・昼食・お風呂をデイで済ませて、帰ったら夕食を食べるだけです。多くの方が18時に夕食を食べて、20時には就寝されています。早寝早起きのリズムができるので、眠そうにデイに来る方はあまりいらっしゃらないです」

デイをきっかけに生活リズムが変わるんですね!

利用者さまが毎日楽しみにされていることのひとつに、朝食で提供される自家製パンもあるんだとか。毎朝利用者さまが到着し扉を開けると、食欲をかき立てるおいしそうな匂いが漂っているそうです。

「自家製パンは利用者さまからとても好評です。家では市販の8枚切りの食パン1枚をやっとの思いで食べていた方が、うちのパンなら分厚くても簡単に食べられるとおっしゃっていただけてとてもうれしく思っています。パンと一緒にお出しする目玉焼きやスクランブルエッグもここで調理しています。コーヒーやお茶もついて朝からボリューミーですが、皆さんおいしそうに食べてくれますよ」

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▲毎日通っても楽しめるよう、少しずつメニューは変えています

 

本格的な朝食ですね! 写真を見ただけでもおいしさが伝わってきます。こうした手作りの朝食を提供する理由には、モーニングデイあさがおの代表の想いが隠されています。

「昔ながらの喫茶店のモーニングセットをイメージしています。代表の父親にあたる世代は、出勤前に喫茶店でモーニングセットを食べてから仕事に向かっていたらしいんですよね。だから利用者さまにも現役の時と同じように朝食を楽しんでほしい、という代表の想いから実現しました」

 

母体はなんとお寺!

「モーニングデイあさがお」は、2016年2月に宗教法人「正光寺」によって開設されました。「正光寺」は埼玉県で保育園も運営しています。お寺が介護事業所を運営するとは珍しいですが、どのような経緯があったのでしょうか?

「人生のすべての瞬間に関わり人の役に立ちたい、また代表がお世話になっている地域の皆さんに恩返しをしたいという想いから開設に至りました。核家族化が進んだ日本では、若い人がご高齢の方と触れ合う機会が減っています。『若者は高齢者に冷たい』とよく言われますが、道端や電車内で困っている高齢者に対して若い人が何もしないのは、無関心だからではなく、どう接していいかわからないからなのです。高齢者と若い世代との交流を増やしたい。その想いから保育園の開設と同時に、この事業所を立ち上げました」

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▲事業所で協力して育てているあさがお

 

テレビをインターネットにつないで園児と交流する時間を設けた時には、2歳ぐらいの園児がダンスする様子を利用者さまがお孫さんを見るようなまなざしで見守っていたのが印象的だったと話してくださいました。これからは近くの保育園とも協力して、直接会って交流する機会を増やす計画もあるそうです。

 

スタッフと利用者さまで作り上げる参加型イベント

外部との交流を図るため、イベントも積極的に開催しています。6月に行われたアニマルセラピーでは、利用者さまはかわいい犬たちに大興奮だったと話します。

「利用者さまが『犬が好き』とよくお話ししていたんですよ。外部からの刺激を取り入れたかったのもあり、セラピードッグを呼んでみました。かわいい犬を見て満面の笑みを浮かべながらお孫さんに向けるような優しいお顔をふっとされる瞬間があって……。良い気分転換にもなりますし本当にやってよかったと思います」

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▲みなさん、かわいい犬に夢中。癒されますね!

 

外部からプロを呼んで行われたバルーンアートも大好評だったとか。「孫に持って帰りたい」ということで利用者さまたちはいろんな色を使ってたくさん作ったといいます。

「これらのイベントが結果的にリハビリにもつながっているんですよね。例えばリウマチで手を動かしにくい方なんかも、不思議とこういうイベントでは自然と身体を動かせたりするんです。気持ち次第では動かせるとわかったら、その情報を報告することで医療機関との連携も強くなります」

ご利用者さまが作ったバルーンアートを帰宅後ご家族に見せると、職員が作ったものだと勘違いされたそう。「ご自分で作られたんですよ」と報告すると「え! 自分で作ったの! そんなこと言ってなかったじゃん!」と驚かれたのだとか。ご家族との会話のきっかけを生み出すことにもつながっているんですね。

最新イベントでは食事を提供している業者さんとコラボレーションした「ご当地グルメ」も大人気なんだとのこと。

「毎月都道府県をランダムでひとつ選び、その特産品をお昼に提供させていただいています。先月は宮崎県の回だったので、マンゴーやチキン南蛮をお出ししました。それを食べながら宮崎県に行ったことのある方の思い出話を聞いて、訪れた場所をテレビに映し出してみました。『あー! ここでお茶飲んだの!』と嬉しそうに話す方がいて、自然と回想法につながっていると感じましたね。ちなみに今月は沖縄県です!」

沖縄県の特産品、何が出るのか楽しみですね! これらのイベントはスタッフ間でアイデアを出し合って考えているのだそう。楽しみながら自然とリハビリもできる、素敵な活動ですよね。

 

大好きだった祖父母への恩返し

以前は運動専門のデイで働いていた戸田さん。管理者として新たなスタートを切ろうと思ったきっかけは何だったのでしょう?

「介護業界をもっと知りたくて、色んな交流会に参加していました。そこで開設コンサルタントを務めている若山と出会い、『新しいデイを立ち上げるから管理者にならないか』と声を掛けてもらったのが始まりです。現場にいたい気持ちもあったのですが、自分が思い描くものをチームで形にする醍醐味を経験してみたいという想いが強く、管理者になることを決意しました」

母体の法人は介護事業が初めてだったこともあり、通常の立ち上げ手続きに加えて、行政などへの申請手続きや助成金の申請もコンサルタントの藤井さんと一緒に行っているそうです。毎日非常に忙しく休むヒマもない戸田さんですが、モチベーションを保つ秘密を教えていただきました。

「何よりもまずはご利用者さまに楽しんでもらいたい、という想いが私の原動力です。昔一緒に住んでいた祖父母の体調が突然悪くなった時、自分は何もできなかったんですよ。もっと知識があれば、祖父母に恩返しができたんじゃないか。そういう想いから介護業界に進むことに決めました」

自事業所について熱く語る戸田さん。ご自身のことに話が及ぶと、なんと取材した日がちょうど入籍日! 奥さまも同じ業界の方なんだとか。

「妻も大きな支えです。よく叱咤激励してくれますよ。結婚が決まった後に、転職して地盤のない事業に挑むことになりました。最初は理解してもらえないと思ったんですけど、『全力でやればいいじゃん』って励ましてくれて、本当に嬉しかったですね」

様々な参加型イベントを開催し、おいしい手作り朝食を食べながら利用者さんの生活リズムを整えていく朝型デイサービス。今年2月に開設されたばかりですが、戸田さんや代表の想いが形になりすでに多くの利用者さんの心を捉えています。「モーニングデイあさがお」を中心に、朝型生活のメリットがもっと広まっていってほしいですね。

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▲毎朝戸田さんが笑顔でお迎えします!

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