[経営者・管理者に聞いた]介護事業所の”いま”

~他事業所の事例を参考にしよう・お互いに頑張ろう~Presented by 介護マスト

「笑楽に行けばなんとかなる」そんな場所づくりを目指して

デイサービスセンター笑楽(わらく)

・埼玉県朝霞市

・定員30名

 

お話を伺った人 

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今成崇司さん(管理者・介護福祉士)

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 今回は埼玉県朝霞市にある「デイサービスセンター笑楽」にお邪魔しました。地域に密着したサービスを展開する同事業所では、通所介護と介護予防通所介護を提供しています。この道15年、ベテラン管理者の今成崇司さんに、デイの特長や今後の目指す方向性などについてお話を伺いました。

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一番の自慢は木の香漂うお風呂

 

笑楽の自慢はなんといってもヒノキとヒバでできたお風呂です。お風呂場に足を踏み入れた瞬間、鼻の奥に届く良い香り。浴槽には深さがあるため肩までしっかり浸かることができます。浮力が生まれることで介助もしやすく一石二鳥! 個浴もあるため皮膚疾患や胃ろう、ストマ、乳がんの方なども気兼ねなくくつろぐことができます。

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▲ドアを開けた途端、ヒノキのいい香りが漂うお風呂

 

このお風呂を採用したのは管理者で介護福祉士の今成崇司さん。

介護施設などでは銭湯のようなお風呂などが一般的ですが、今成さんはあえてこのタイプのお風呂を採用したといいます。

 

「それまで見てきたような銭湯のようなお風呂では、利用者さんが本当にリラックスできているように見えなかったんです。本当のユニバーサルデザインじゃないっていうか、風呂なのにみんな手すりに掴まって必死に入っているというか……。だからここでは心からリラックスして、家と同じようにくつろいで欲しかった。導入前はちょっとチャレンジだな、と思いましたけど、導入してみたら好評で、介助する手間もあまり変わらないし、良かったと思っています」

そう話す通り、入浴制限を設けていない同事業所では、来所するたびに入浴する利用者さんも少なくないそうです。

「他のデイと併用している利用者さんもいるんですが、そっちのお風呂は短時間で済ませるのにうちの風呂はやたら長湯っていう方もいます。風呂の評判が広まって、それが決め手でいらっしゃる利用者さんも多いですね。先日は3ヵ月風呂に入っていないっていう方が来所されて、風呂入ってサッパリした顔されてて、見てるこっちも気持ちよくなりました(笑)」

そんなに評判のいいお風呂なら入らない手はない! と、(お湯を張っていない)浴槽に取材班が試しに入ってみると……本当に深い! と同時に漂ってくる、ヒノキのいい香り……。どこかの温泉にいるかのような気分になれたのは言うまでもありません。

 

“制服”という壁をなくし、出入りも自由

 

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▲ぱっと見ただけではどの人がスタッフかわからない

 

「うちはスタッフの制服がないんです。フロア見て、誰がスタッフかパッと見でわかりますか?」

今成さんにそう言われてフロアを見渡してみても、確かに誰がスタッフかすぐにはわかりません。

「制服があることでかえって壁ができてしまうんじゃないか、と思ったんです。それにうちは出入り口から誰かが入ってくればみんなが見るし、誰かしらが必ず声をかけます。だから玄関にはベルもついてないしカギも閉まっていません。誰でも入れるし、いつでも出ていけるようになっています」

“制服”という壁がなく、出入りも自由な「笑楽」。しかし認知症の利用者さんもいるなか、安全面が気になるところですが……。

「ご利用者さんのことをよく観察していれば、誰がいつ、どんなタイミングで外に出るかはわかります。付き添いしなくても、誰がどこに行っているかわかっているのでそれほど心配していません。むしろ、危ないからといってカギかけて、外に出られなくするほうが利用者さんを不穏にさせてしまうので、それは避けたいと思っています」

万が一のときのリスクマネジメントについても普段から気を配っているといいます。

「もちろん、いつ状況が変わるかなんて誰にもわかりません。でもリスクって紙一重だと思うんです。歩行が不安定な場合、転倒リスクがありますが『転倒の可能性があるから歩行練習はやめましょう』なんていうのはご本人の意志をまったくもって否定していることになりますよね。歩きたい、でもリスクがある。そんなときは”じゃあどうすればいいか一緒に考えましょう!”っていうスタンスで、一緒に考えるんです。まずは手引きで歩いてみましょうって提案してみたり……。危ないからやらない、じゃなくて、危ないから付き添う。他の方法を模索する。それがスタッフの役割だと思っています」

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▲出入り口に七夕の飾りが。それぞれ思い思いの願いが書かれていた

 

すべては“自分だったらどう思うか”

 

実は今成さんは帰国子女。中学3年生から大学1年生のときまで、ご両親の仕事の都合でアメリカに住んでいたといいます。

「いやー、あの時はつらかったです。右見てもアメリカ人、左見てもアメリカ人。テレビも看板も、店のメニューも全部英語。それでものすごく孤立感を感じて。その時の記憶がいまも強く残っていて、利用者さんにはこんな思いさせたくないな、と。利用者さんも新規で来所されたとき、右見てあんた誰? 左見てもここはどこ? って、きっと思ってると思うんです。その気持ちを少しでも和らげてあげたい。 “自分だったらどう思うかな?”ってことを常に念頭に置いて行動するように心がけています」

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▲『かつては英語も話せましたが……』と笑う今成さん

 

“もちろん英語はもう忘れましたよ(笑)”と話す今成さん。今後についてはどう考えているのでしょうか。

「今後はここを拠点に情報発信していきたいなって思っています。地域とのネットワークを構築して福祉力をあげたり、事業者同士のつながりを広げたりもしていきたい。実はいま『こみゅけあnet in ASAKA』というネットワークを立ち上げて運営しているんです。地域と介護事業所がともに学びながら地域連携を図っていこう、という取り組みです。これまでに2回ほど集まって意見交換したりしました。もし誰かが何かわからなくて困ってたら、笑楽が窓口になって相談にのってあげたい。そういうことを積み重ねていくと、そのうち小さい地域包括ケアシステムができあがるんじゃないかな、と。『笑楽の今成さんのところにいけばなんとかなる』って思ってもらえるような場所になれればいいなって思います」

 

介護にだって野心があっていい

 

いまだ介護は華やかさがなく、汚い・きつい・給料少ないといわれ、就職してやりがいはあってもなかなか長続きしない人が多いのが現状です。それに対して今成さんは

「もっと野望のある若い人たちに入ってきて欲しいですね。介護やってたってベンツ乗ったっていいんだし、お金を稼いだっていいと思います。そういう野心がないと成長していきにくいと思うんですよ。その野心を的確に利用して社内制度に落とし込んでいかないと、若い世代が育たない。それに会社の理念というのをしっかりと持って、それにもとづいて評価してあげることも大切です。よく施設長が変わると何もかも変わっちゃうってパターンがありますが、コンビニとかで店長変わったら商品が全部変わるなんてことはないじゃないですか。介護も同じだと思うんです」

介護業界をもっと盛り上げていきたい―。介護の世界に入って15年、ベテランといわれる年月が過ぎた今成さんですが、介護に対して愛着があるからこそのお考えをたくさん聞くことができました。デイの新店舗出店や新業態の事業所開設も進めているとのこと。今後の今成さんの活躍に期待しましょう!

 

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▲きれいに仕上げられた塗り絵作品がズラリ並んでいた

 

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